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摺動性の高い材質の選定で、困った経験はないじゃろうか。摺動性を考慮して材質を選定したが、「コストが高くなってしまった・・・」「寸法安定性が良くなかった・・・」「高温に弱かった・・・」なんて事態に陥り、どの樹脂素材が最適かわからないといったことがあると思う。樹脂材料で高い摺動性を有しているものは、一般的には”超高分子量ポリエチレン”、”PTFE”というのがあり、その他も選択肢があるのじゃ。ただ、この2種類で全ての樹脂材料の用途を満足するのは困難じゃ!そこで、今回は摺動性の高い材質の選定にお困りの方に向け、『摺動部品の使用条件に合った材質とは?』をご紹介するぞ!是非、最後まで確認してくれ!(byプラスチック博士)
摺動性の高い材質を選定する場合には、まず「動摩擦係数」を鑑みる必要があります。当記事では、まずは各樹脂における動摩擦係数を確認したあと、求められる機能(耐熱性、寸法安定姓、機械的強度など)に応じた、最適な材質が選定できるよう情報をご提供して参ります。
1.摺動性が求められる場合に、まず選定すべき材質用途
摺動性とは、簡単に説明すると滑りやすさのことです。高い摺動性がある樹脂は、動摩擦係数が小さく、潤滑性があり、”スライドプレート”、”ライナー”、”ガイド”、”スターホイル”、”軸受”、”ブッシュ”、”ローラー”など様々な部品に採用されています。
摺動性の高い材質の代表格は、超高分子量ポリエチレン、そして高価ですがテフロン(PTFE)です。特にレールなどは、最初の検討段階ではこちらを採用しておけばほぼ間違いないでしょう。下記にてスペックを記載いたします。
材質 | 求められる機能 | 動摩擦係数 | 連続使用温度 | 耐衝撃性 | 線膨張係数(×10-⁵/℃) | 価格 (安い順) |
超高分子量
ポリエチレン |
価格を安くしたい方におすすめ。ただ、寸法安定性・耐熱性は良くない。 | 0.11~ | 80℃ | ◎ | 20 | 1 |
テフロン | 耐熱性・耐薬品性に優れている。ただし、価格が高い。 | 0.04~ | 260℃ | 〇 | 11.2 | 2 |
2.摺動性「以外」の機能が求められる場合の選択肢
ただし、超高分子量ポリエチレンやテフロン(PTFE)も、すべての条件を満足できる訳ではありません。用途によって下記のような課題が発生すると、機能を満足できなくなります。
①摺動の速度や部品が擦れる影響で、温度が上昇する
摺動部品の滑り速度や部品同士が複数回擦れると、当然ながら摩擦熱が発生します。高温の環境下では、表面の温度上昇を引き起こし、材料の熱的な劣化を促進してしまう可能性があります。
②部品同士の摩擦により、摩耗が懸念される
摺動部品は連続して部品同士が高頻度で接触するため、摺動性が高いといっても摩擦により摩耗が発生します。これは長期間の使用が想定される場合に考慮しておくべきポイントです。
③衝撃や繰り返し荷重がかかる
例えば非常に重い製品に取付らえる場合など、衝撃や繰り返し荷重が頻繁にかかる場合は、疲労損傷や亀裂が生じやすくなります。
上記のような条件を考慮すると、動摩擦係数に加えて、「耐熱性」「機械的強度」などのスペックも合わせて検討する必要があります。
そこで検討して頂きたいのは「摺動グレード」です。摺動グレードをラインナップしている素材はMCナイロン、POM、PET、PEEK、PAI、PPSなどがあります。下記にて、摺動グレードのスペックを纏めていますので、まずはご確認ください。
材質 | 求められる機能 | 動摩擦係数 | 連続使用温度 | 耐衝撃性 | 線膨張係数(×10-⁵/℃) | 価格 (安い順) |
MCナイロン (摺動グレード) |
摺動性が高い素材を求められる方におすすめ。ただ、寸法安定性がPETと比較して良くない。 | 0.09~0.11 | 110℃ | 〇 | 9 | 4 |
PEEK (摺動グレード) |
機械的強度と耐薬品と耐熱性を求める方におすすめ。ただ、価格が他の樹脂よりも高い。 | 0.29~0.32 | 250℃ | 〇 | 5 | 6 |
POM (摺動グレード) |
摺動性と機械的強度と価格の低さを求める方におすすめ。ただ、耐熱性が弱い。 | 0.12~0.16 | 95℃ | 〇 | 6.9 | 2 |
PET (摺動グレード) |
吸水性と衝撃性を求める方におすすめ。ただ、寸法安定性が良くない。 | 0.28~0.33 | 100℃ | 〇 | 9 | 3 |
PPS (摺動グレード) |
耐熱性はPEEKには劣るが高く、価格はPEEKと比べて安価である。ただ、割れやすい。 | 0.15~0.17 | 220℃ | △ | 5 | 5 |
つまり、
・『とにかく、安くしたい!』⇒超高分子量
・『とにかく、摺動性が高い素材を使いたい!』⇒テフロン
・『耐熱性に加えて、機械的強度も求められる!』⇒MCナイロン(摺動グレード)
・『吸水率が低く、耐衝撃性が欲しい!』⇒PET
・『耐熱性・耐薬品性・耐衝撃性が求められる場合!』⇒PEEK(摺動グレード)
上記のような使い分けが最適となります。是非ご参考ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、『摺動部品の使用条件に合った材質とは?』を詳しくご紹介しました。摺動性がある樹脂材料を選定する際には、是非、当記事をご活用ください。その上で「求められる用途に応じた、最適な樹脂材料が分からない…」といったお悩みをお持ちの方は、プラスチック切削加工.comを運営するケイプラビジョンまでお気軽にご相談ください。お客様のご要望に沿った最適な樹脂材料をご提案いたします。