樹脂素材は元々摺動性があるもの、例えばPTFE(テフロン)や超高分子量ポリエチレンなどがありますが、使用条件や形状、必要公差などにより使用できないケースも多々あります。テフロンや超高分子量ポリエチレンの場合は、強度や寸法が安定しないなどの問題で、摺動性はいいが採用できない・・・といったケースもあるようです。
その様な場合には、使用用途にあった樹脂素材の中から、摺動性をプラスした摺動グレードを選択することに成ります。たとえば下記の写真はキャストナイロンの摺動グレード(CN-CL)になります。
摺動グレードをラインナップしている素材はMCナイロン、POM、PET、PEEK、PAI、PPSなど沢山あります(世の中で採用されている有名どころの樹脂素材には、殆ど摺動グレードがあると思っても差し支えありません)。また、先程元々摺動性があると言ったPTFE(テフロン)や超高分子量ポリエチレンにも、更に摺動性を増した摺動グレードが存在します。
なお、摺動性をアップさせる為には添加剤を入れるため、たいていの場合元の素材の色とは異なる場合が殆どであることと、標準グレードに比べ物性が劣るものもあります。例えばテフロンであれば通常は白ですが、摺動グレードは黒になります。従って、選定時には摺動性はもちろんのこと、色についても注意して選択することが必要です。
ちなみに、代表的な材質ごとの、通常グレード・摺動グレードの動摩擦係数の比較表は下記の通りです。動摩擦係数に関しては、メーカーにより試験条件が異なるようで、下記数値に関しては参考までに留めて頂ければと思います。
材料 | 動摩擦係数(参考値) | |
通常グレード | 摺動グレード | |
MCナイロン | 0.47~0.5 | 0.09~0.11 |
POM | 0.34~0.39 | 0.12~0.16 |
PET | 0.28~0.33 | 0.28~0.33 |
PEEK | 0.31~0.36 | 0.29~0.32 |
PPS | 0.31~0.34 | 0.15~0.17 |
PAI | 0.35 | 0.20 |
超高分子量ポリエチレン | 0.25~0.29 | 注1 |
テフロン | 0.15~ | 注2 |
注1:摺動グレードはあるが試験方法が違うため記載せず
注2:摺動グレードはあるがメーカーによる数値公表なし
ちなみに、同じMCナイロンの摺動グレードでも、メーカーにより動摩擦係数の数値は様々です。摺動性が高いことに変わりはありませんが、特に摺動性が重視されるようなケースでは、メーカー毎にこの数値を確認する必要があります。
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