PEEK(Poly Ether Ether Ketone、ポリエーテルエーテルケトン)と言えば、樹脂の中でもスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれ、非常に優れた耐熱性・耐薬品性・耐摩耗性を持ち、さらに機械的強度にも優れるなど、様々な特性を持つ代表的なプラスチック素材です。その様な特性を活かして半導体や薬品・化学などのあらゆる分野でネジ・ボルトとして使用されています。他の樹脂素材もそうですが、PEEK製のネジ・ボルトも大量に使用されるものは規格化されており、例えば汎用の六角ボルトなどはM12で長さ70mmくらいのものまでは揃っています。この様に規格化されている物はそのほとんどが成型品で価格も非常に安価ですが、それ以外のいわゆる特殊仕様のPEEKのネジ・ボルトは、我々の様な樹脂加工メーカーが複合旋盤などを用いて1個づつ切削加工をして製作をしていくことに成ります。
ネジ・ボルトという用途で使用する場合に一番肝心なところは強度です。物と物とを締め付けて止めるためには締め付けトルクが掛かりその圧力に耐えられる物でなくてはならないからです。その点ではPEEKは非常に優れており、エンジニアリングプラスチックの中では機械的強度に優れていると言われ超汎用的に採用されているMCナイロンと比較しても、PEEKは引張弾性率:約1.3倍 圧縮強度:約1.25倍 圧縮弾性率:約1.2倍 曲げ強度:約1.6倍 アイゾット衝撃値:約1.6倍 など いずれの値も大きくMCナイロンを上回っています。このような数値からも、ネジ・ボルトとしてPEEKが採用されている理由がお分かりいただけると思います。また、PEEKがネジ・ボルトとして採用されている理由には機械的強度以外の特性があります。もうお気づきと思いますがその理由とは、耐熱性・耐薬品性が優れている、という点にあります。半導体装置、液晶機器、メッキ工程や食品加工機、医療機器などでPEEKが採用されるのは、機械的強度も耐熱性・耐薬品性も非常に高いということが理由なのです。PEEKと同様にネジ・ボルトとして多く採用されているスーパーエンジニアリングプラスチックの中にテフロン(PTFE)がありますが、機械的強度においては圧倒的にPEEKが有利です。なお、コスト面はというとPEEKという材質は高い部類に属しますので、何でもPEEKネジ・ボルトにしてしまうというのはあまりお勧めできません。特殊樹脂ネジ・ボルトが必要な際には、PEEKはもちろんですが、PPSなどの材質も含めて検討することが得策です。