皆さんは、樹脂材料の選定に困った経験はないじゃろうか。求める製品用途に応じた最適な樹脂材料の選定ができていない場合『無駄に材料コストがかかってしまった…』『機械的強度・耐熱性に不安が残る…』なんて事態に陥ることもしばしばあると思う。しかしながら、樹脂材料と一口にいっても、”汎用プラスチック”、”エンジニアリングプラスチック”、”スーパーエンジニアリングプラスチック”、”強化プラスチック”などなど幅広い種類が存在しておる。正直、これら全ての樹脂材料の機能を把握するのは困難じゃ!そこで、今回は樹脂材料の選定にお困りの方に向け、『”失敗しない”樹脂材料の簡単選定方法!』をご紹介するぞ!是非、最後まで確認してくれ!(byプラスチック博士)
樹脂材料の選定の際に、大きく求められる特性としては、①機械的強度、②寸法安定性、③摺動性、④耐熱性、⑤耐薬品性が挙げられます。当記事では、これら5つの特性に絞り、各特性が求められる場合に最適な樹脂材料をご紹介します。※なお、当記事では流通性を考慮し、幅広く使用されている代表的な樹脂材料を中心にご紹介します。
1.機械的強度
機械的強度が求められる場合には、POM・MCナイロンを選定しましょう。POM、MCナイロンはどちらも機械的強度が非常に高い樹脂材料です。そんなPOM、MCナイロンにも細かな違いがあります。まず、コスト面ですが、POMの方がMCナイロンよりも安価といえます。一方で、機能面ではMCナイロンの方がPOMよりも機械的強度を含め、耐熱性、摺動性などが優れています。そのため、コスト面を考慮する場合はPOM、さらなる機能面を求める場合はMCナイロンといった使い分けが最適となります。
2寸法安定性
寸法安定性が求められる場合には、PEEK・PPS・PET・ユニレートが最適です。特に切削加工で±0.1mm以下の加工精度を実現するためには、寸法安定性に優れているこれらの樹脂材料を選定する必要があります。中でも、寸法安定性に優れている順番としては、①PEEK→②PPS→③PETとなります。しかしながら、材料価格等を考慮すると『とにかく加工精度を出したい!』といった場合、PETが最適であるといえます。(※ちなみに、PTFEやPPなどの樹脂材料は柔らかいため、高度な加工精度を実現できないので注意しましょう。)
3.摺動性
摺動性が求められる場合には、超高分子量ポリエチレン・PTFEを選定しましょう。そもそも、樹脂自体がもともと摺動性が高い素材ではありますが、各種類によって細かく摺動性が異なります。下図は、樹脂材料の摺動性を評価する動摩擦係数の比較表です。図の通り、樹脂材料の中で最も摺動性が優れているのはPTFEであり、その次に優れているのが超高分子量ポリエチレンとなります。
4.耐熱性
ご存知の通り、金属などと比較すると樹脂は熱に弱い材料といえ、120℃以上の温度に耐えうる樹脂素材は多くはありません。そんな120℃以上の高温に耐えうる樹脂材料としては、PEEK・PTFE・PPSが挙げられます。これらの樹脂材料はどちらもおおよそ、耐熱温度が250℃程度であり、樹脂材料の中では最高クラスの耐熱性を誇ります。さらに、その中でもPEEKは、機械的強度・寸法安定性にも優れている万能の樹脂材料であるため、『耐熱性に加え、機械的強度が欲しい!』なんて場合にはPEEKを選定しましょう。
5.耐薬品性
耐薬品性に優れた樹脂材料としては、PTFE・PPS・PEEK・PPが挙げられます。下図の通り、PTFE・PPSは酸性・アルカリ性・有機溶剤の全てに耐性がある優れた樹脂材料です。次いで、PEEKも濃硫酸以外のおおよそ全ての薬品に耐性があります。最後にPPですが、強酸・強アルカリへの耐性がなく、弱酸・弱アルカリへの耐性を持った樹脂材料です。しかしながら、PPはPTFE・PPS・PEEKと比較すると価格が安価であるため、使用環境によっては上手に活用することで材料費のコストアップを防止することが可能です。
簡単にまとめると、
・『とにかく、耐薬品性に優れた樹脂材料が欲しい!』⇒PTFE、PPS
・『耐薬品性に加えて、機械的強度も求められる!』⇒PEEK
・『弱酸・弱アルカリ性の環境下で使用できるコストが安価な樹脂材料が欲しい!』⇒PP
上記のような使い分けが最適となります。是非ご参考ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、『”失敗しない”樹脂材料の簡単選定方法!』を詳しくご紹介しました。樹脂材料を選定する際には、是非、当記事をご活用ください。その上で「求められる用途に応じた、最適な樹脂材料が分からない…」といったお悩みをお持ちの方は、プラスチック切削加工.comを運営するケイプラビジョンまでお気軽にご相談ください。お客様のご要望に沿った最適な樹脂材料をご提案いたします。