樹脂の切削加工品で、精度高いものが欲しい、でもコストも安くしたい、というのは、プラスチック製品を開発・設計される方々の永遠のテーマではないでしょうか?(笑)
これまでプラスチック切削加工.comでは一貫して 「樹脂切削加工は最適な材質を選択することが重要」 と申し上げてきましたが、今回のテーマである高精度な樹脂切削加工も同様で、材質の選択がとても大事になります。もちろん設備も重要なファクターにはなりますがここでは代表的なエンジニアリングプラスチックを取り上げて、ご紹介していきたいと思います。
まずここで、樹脂の切削加工における 「高精度な加工」の定義を、
寸法精度±0.05 とします。
1.高精度な樹脂切削加工を、安価に入手したい場合
±0.05mm以下の寸法精度を出そうとする場合、材料が安価な順に並べると下記の通りになります。
ABS → PET → PC → PBT → PPE → ユニレート → PPS → PEEK
つまり、もし寸法精度だけが重要な場合は、ABSを選択するとコストも安価になる、ということです。
2.±0.01mmあるいはそれ以下の高精度樹脂切削加工品を入手したい場合
さらに高精度な樹脂切削品を入手したい場合には、その材質の線膨張係数に着目します。
理論的には、線膨張係数が小さければ小さいほど、高精度に加工を行うことが可能です。
例えば先ほど挙げた樹脂の各材質の線膨張係数は下記の通りになります。
また樹脂・プラスチックは吸水率も重要なファクターになり、この数値が大きいと空気中の水分を吸収し寸法が変化してしまうことがあります。ただ今回ご紹介する材質についてはそれほど心配するような数値ではないと考えます。
材質名 | 線膨張係数 | 吸水率 | 特徴 |
ABS | 7 | 0.20 | アルカリ・酸に強い、接着可 |
PET | 6 | 0.05 | 寸法安定性 |
PC | 7 | 0.25 | 寸法安定性、耐衝撃性、透明 |
PBT | 6 | 0.08 | 寸法安定性、耐薬品性、電気的特性 |
PPE | 4 | 0.10 | 寸法安定性、酸・アルカリに強い |
ユニレート | 縦4、横7.4 | 0.10 | 加工性、寸法安定性、絶縁性 |
PPS | 5 | 0.02 | 耐薬品性、寸法安定性、耐熱性(220℃) |
PEEK | 5 | 0.14 | 耐薬品性、寸法安定性、耐熱性(260℃) |
※例えばPEEKにはガラス入りグレードというものも存在し、これは線膨張係数もより低く、高精度加工に適しています。
なお、機械部品としてよく採用されるものと比較すると、上記の線膨張係数や吸水率が低いのがお分かり頂けるかと思います。
MCナイロン・・・線膨張率:9 吸水率:0.8 、 POM・・・線膨張率:8 吸水率:1.8
つまり、±0.05mmが要求される製品には、MCナイロンはできれば使わない方がいい・・・という事になります。
3.最後に
いかがでしたでしょうか。高精度な樹脂切削品を入手するためには、基本的には線膨張率の低いもの、吸水率の低いものを選択することが必要ですので、ぜひ上記の表を参考にして頂ければと思います。
ただ、プラスチックの材質選定にあたっては、精度はもちろんですが耐熱や耐薬品性など他に重視する要素も大きいと思いますので、より良い材質を相談したい(コストも相談したい)!ということであれば、お気軽にご相談頂ければと思います。