皆様もご存知の通り、昨今、市場は深刻な樹脂材料不足に陥っている。樹脂材料不足の主な要因としては、電子機器の需要が増えたことや、新型コロナウイルス等により化学メーカーの樹脂製造ラインが停滞したことなどが挙げられる。さらに、これらに加えて、昨今の世界情勢(ロシア・ウクライナ問題等)も樹脂材料の供給網に大きな影響を与えているのじゃ。その結果、一部の樹脂材料の不足・価格高騰がこれまで以上に加速している。樹脂材料の不足・価格高騰が頻発している現在のような状況下でこそ、代替となる材質を上手に活用することが求められる。そこで、今回は現在(2022年8月)入手が難しく、価格が高騰している”POM”の代替となる樹脂材料について紹介するぞ。
今回のテーマであるPOMの原材料の一つに、メチルアルコールがあります。実は、このメチルアルコールの素となっている材料が、天然ガスとなります。ロシアは、世界第2位の天然ガスの産出国であり、日本も国内で消費する多くの天然ガスをロシアより輸入しています。しかしながら、ロシア・ウクライナ問題等の世界情勢の影響を受け、この天然ガスの供給が不十分である状況が続いています。その結果、POMの製造ラインが停滞しており、材料不足・価格高騰へとつながっています。今回は、そんなPOMの材料不足・価格高騰にお悩みの方に向け、POMの代替となる樹脂材料について詳しくご紹介します。
POMとは?
まず、POMとはどんな素材であるか改めて確認してみましょう。
POMは、エンジニアリングプラスチックの1種であり、機能性から鑑みると非常に安価な樹脂材料といえます。POMの特徴としては、優れた機械的強度、耐熱性(連続使用温度:約100℃)が挙げられます。一方で、その他のエンジニアリングプラスチックと比較すると、難燃性や耐候性に劣るといえます。これらの特徴から、POMは機械的強度・耐熱性が求められるガイドや、軸受け、ローラーなどに用いられています。また、金属部品の代替として使用されることもしばしばあります。
POMの代替となる材質とは?
POMの代替としては、PET、MCナイロン、PBT、PPなどの材質が使用されることがあります。そこで、下図にてPOMの主な特徴である機械的強度・耐熱性・材料価格に絞り、これらの材質の機能を比較・確認してみましょう。
上図からわかる通り、POMと同等以上の機械的強度・耐熱性を持っている樹脂材料は、PET、MCナイロンの2種類となります。PBT、PPでは、POMと同程度の機能を満たすことができないので、注意をしましょう。
中でも、MCナイロンは、機械的強度、耐熱性のどちらもPOMより優れています。しかしながら、安価なPOMと比較すると、材料価格は3倍以上であるため、POMの代替として使用すると、大幅な材料費アップにつながります。
一方で、PETの材料価格は、安価なPOMと比較しても、おおよそ同様となります。また、POMとPETは、材料比重もおおよそ同様です。(POM:1.41g/ml PET:1.38g/ml )そのため、POMの代替材料としては、PETが最も適しているといえます。ただし、POMと比較すると、PETの流通量は少ないので、大量のPETのご使用を検討されている方は注意が必要です。
まとめ
今回の内容は参考になりましたでしょうか。POMが入手できずお困りの方は、是非、PETの活用を検討してみてはいかがでしょうか。もちろん、加工条件、製品用途により、最適な材質は異なりますので、樹脂素材の選定にお困りの際は、プラスチック切削加工.comを運営するケイプラビジョンまでお気軽にご相談ください。お客様のご要望に沿った最適な樹脂素材をご提案いたします。